WILD UD通信 「5月 定例会の様子」

5月のUD湘南定例会は、兵庫教育大学大学院の宇野宏幸先生にお越しいただき、講話をいただきました。講話内容を一部ですが、紹介します。

「発達障害研究から考える通常学級の授業づくりと学級経営」  授業のユニバーサルデザインからインクルーシブデザインへ

 

【発達障害と授業づくり】

 

○発達障害の子は、困った子?

 

 順番を守れなかったり、授業の準備が遅くなってしまったり、宿題を忘れてしまったり……困った一面が目立ってしまう、発達障害の子。しかし、他の子どもたちにはない、ユニークな発想やきわだった知識をもっているという特徴もあります。そうした発達障害の子どもたちの多様な面を把握、認識して、授業づくりをしていきたい。

 

○問題行動は子どもニーズへの気づき

 

 発達障害の子の問題行動を発見した際に、つい、注意や叱責をしてしまうことが多いが、そうした問題行動を障害の特性ととらえることで、その子どもにどんなニーズがあるかを知る手がかりにすることができる。問題行動をネガティブに受けとるのではなく、ポジティブに見方を変えることで、子どものニーズに気づくことができる。

 

○行動は子どものサイン

 

 授業中に、となりの子にちょっかいを出してしまう子。眠ってしまう子。2つの子どもは、見える姿としては全く違うものだが、その行動の根っこにあるものは、『授業がわからない→つまらない』という共通したものであったりする。

 

たとえば・・・

授業がわからない・つまらない+障害の特性(衝動性)=ちょっかいを出す

授業がわからない・つまらない+障害の特性(覚醒水準低下)=眠ってしまう 

 

○インク―シブデザインへ

 

 学級の中には、いろんなニーズをもった子どもたちがいる。そうしたいろんなニーズにどうこたえ、どう調和させていくか考えて授業づくりをしていかなければならない。

  

【注意欠陥/多動性障害(ADHD)】

 

ADHDの注意

 

 ●苦手なこと

  持続的注意(勉強をコツコツする、話をずっと聞く)

  実行的注意(刺激が多い中で一つに集中する)

   →注意のコントロールが苦手なので、大事なものをおとしてしまう。

 

◎得意なこと

   出てくるものへの注意力は優れている!

 

たとえば…森の中を歩いていたとすると、ちょっとした物音や動物などに敏感に反応することができる。狩猟民族の末裔とも言われるほど、本能的な注意力は優れている。農耕社会・協同社会に似た学校生活はADHDの子どもにとっては、自分の力を発揮しづらい環境とも考えられる。

 

ADHD児とフラッシュカード

 

  ADHDの子どもの障害特性やニーズにこたえる(インク―シブする)ための一つの手段としてフラッシュカードがあげられる。フラッシュカードは、視覚的な変化(出現・動き)があるので、単元導入や授業のはじめ、復習等で活用していきたい。授業の初めで取り入れることは、その後の授業での注意の持続にもつながると考えられる。

 

 ○「視覚化」・「活動」は注意集中に効果的

 

  授業中の子どもたちの注意を調査した結果によると、障害のあるなしにかかわらず、口頭での説明を聞いている時間よりも、視覚的なものが提示されているときや、実際に自ら活動している時間の方が、注意や集中が持続していることが分かった。

 

 ○視覚サインですべきことを

 

  「聞くとき」、「書くとき」など、するべきことを視覚的にわかるカードにして掲示をすることで、何をするかが分かりやすくなる。

 

【自閉症スペクトラム(ASD)】

 

○聞き理解が苦手

 

  聞き取った言葉から単語、文脈を認識し、文の意味理解をすることが苦手。隠喩に気付くことなども苦手としているため、具体的な表現でないと、相手の意図を理解できなかったりすることがある。

 

 ○インクルーシブするために

 

  物語の学習でマインドマッピングを活用し、「見える化」したり、動作化を取り入れ、経験学習をさせたりすることも有効である。

 

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コメント: 1
  • #1

    nobuyuri (月曜日, 16 6月 2014 20:54)

    宇野先生の講義はとってもためになり、次の日から生かそうと思いました。またぜひ講和おききできればと思っています。